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2024.05.28
インド
【インド】特許規則改正(2024)
インドの特許規則が2024年3月15日に改正・施行されました(Patents (Amendment) Rules 2024)。今回の改正は、2003年施行・2021年改正の特許規則を更に改正したものであり、昨年2023年に改正案として発表されていたものが、正式に決定・公表されたものです。
従来の規定とその改正点(主なもの)
項目 | 従来の規定 | 改正点 |
---|---|---|
審査請求期限 | 優先日又は出願日(いずれか早い方)~48か月以内 | 優先日又は出願日(いずれか早い方)~31か月以内
※注1 |
対応外国出願の情報提供の義務(特許法8条(1)) | 対応外国出願に関する情報を、特許付与日まで通知し続ける必要がある。 | 対応外国出願に関する情報を提供するのは、下記3度の機会のみでよい。 (1)インド出願/移行~6か月以内 (2)最初の審査報告書(FER)~3か月以内 (3)審査官より指令があった場合それから2か月以内 【いずれも3か月延長可能】 |
対応外国出願の情報提供の義務(特許法8条(2)) | 提出を要求された時(多くは最初の審査報告書(FER)内に記載)~6か月以内に、対応外国出願の審査関係書類を提出する。 | 出願人の義務は原則廃止。 審査官が、各外国のアクセス可能な公共データベースより入手する。但し、審査官は出願人に2か月以内の提出を要求することが出来る。 【3か月延長可能】 |
実施報告書提出 | <提出時期> 毎年4月1日~9月30日 |
<提出時期> 変更なし 【3か月延長可能】 |
<対象となる期間> 登録となった年の次の会計年度分を毎年提出 |
<対象となる期間> 登録となった年の次の3会計年度分から、3年ごとにまとめて提出 ※注2 |
|
<様式> Form27を提出 ・実施の有無 ・実施の場合、その実施状況 ・不実施の場合その理由 等を記載する必要あり |
<様式> 改正Form27を提出 ・実施/不実施を選択 ・実施の場合、実施状況は報告不要 ・不実施の場合、その理由及びライセンスが可能かどうか選択 ・複数の案件について報告の同時提出が可能 |
|
特許年金の割引 | なし | 4年分以上を前払いする場合は、10%割引が適用される。 |
期間延長 | 一定の手続は延長規定から除外 | 例外規定が除かれ、規則に基づくすべての手続(※注3)について、所定の手数料を支払い、Form4により申請を行うことで、月単位で最長6か月まで延長可能。 延長費用の大幅な値上げあり。 ※注4 |
分割 | 特許法16条に分割出願の規定はあるが、特許規則には具体的な規定がほとんどなく、審査官の裁量や判例に従って運用されていた。 | 分割出願について規定した特許法16条の運用について、具体的に規定されている。 特に、 ・分割出願(a further application)からの分割出願が可能であること。 ・分割の対象となる親出願における複数の発明は、明細書に開示されていればよい(必ずしもクレームに開示されていなくてもよい)ことが明確化されている。 |
改正特許規則においては、上記に挙げたもののほかにも、グレースピリオド制度に関する規定、異議申立制度の具体的な流れや手続に関する規定、手数料の改定、各種Formの改定などがあります。
まとめ・概要
今回の改正は、特許法、特許規則における規定の中で、現状にそぐわないものを廃止し、あいまいに解釈されていたもの、複雑化していたものについて、明確化、簡素化を目指すものであるといえます。より実務の現状に即したものとなっており、この点において歓迎すべきものであります。但し、期間延長の制度など、実際の運用のされ方については不明なものや、現地代理人の見解が分かれる事項もあり、今後の状況を注視していく必要があります。
インド特許規則改正について、ご不明点やご質問がございます場合は、お気軽に弊所までお問い合わせ下さい。
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※注1
2024年3月15日以降にインド国内へ出願・国内段階移行した件のみが対象となる。
※注2
具体例
登録日 | 次回報告時に対象となる期間 | 次回実施報告提出期限 |
---|---|---|
2023年3月31日以前 | 2023年4月1日~2026年3月31日 | 2026年9月30日 |
2023年4月1日~2024年3月31日 | 2024年4月1日~2027年3月31日 | 2027年9月30日 |
※注3
期間延長を規定する規則138の適用範囲については、「あらゆる手続(any act or taking any processing)」との記載があるものの、実際の運用に関する現地代理人の見解はさまざまである。審査報告書(FER)応答期限の延長など、規則の条文そのものの中にすでに延長の規定がある場合、また、国内移行期限などPCT条約の制約を受ける場合に、同規則により更に6か月の延長が可能かどうかについては、今後の特許庁の見解が待たれる。
※注4
PCT移行の場合、移行時(優先日~31か月以内)に優先権書類英訳の提出を行わなかった場合、提出の遅延とみなされ、その後審査官の指令により提出した場合には延長費用を支払う必要があるという現地代理人の見解がある。今後新規則138に規定されている延長料金が適用された場合、その費用が高額(最大で約USD3750)にのぼる可能性があるため、移行時に優先権書類の英訳を提出しておくのが、安全策の一つであるといえる。