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2024.11.05
外国特許実務
PCT
『先の調査の結果の利用請求』の効果
国際出願を行う際、出願人が完全同一である、審査請求済の先の国内出願（又はJPOを受理官庁とする先の国際出願）がある場合、国際出願願書にて、『先の調査の結果の利用請求』を申請することで、国際出願における調査手数料の一部返還を受けることが可能です*1。
直接的な効果はもちろん、庁費用の返還ですが、副次的な効果として、早期審査の申請を行うことなく日本における審査の開始を早めることができますので、ご紹介します。
『先の調査の結果の利用請求』を申請する典型的なケースは、以下のとおりです。
（パターン１）国際出願の内容に基礎出願からの追加が無い場合
（パターン２）国際出願の内容に基礎出願からの追加が有る場合
（背景と効果）
国際出願に対して、受理官庁である日本特許庁は早期に国際調査報告を発行する義務があり*2、また、先の調査の結果の利用請求の申請により、日本特許庁は国際調査を開始する前に国内出願の審査等を行いOA等を作成する義務が発生する*3ことが背景にあります。
「先の調査の結果の利用請求」を利用することで、日本において早期審査を申請しなくても、日本での1st OAの発行を早めることができれば、外国出願においてその審査結果を利用したJP-PPHの申請が可能となります。
参考までに、（パターン１）、（パターン２）と、PCT日本移行出願に対して早期審査の申請を利用したケースを比較のため、表にまとめます。
| 『先の調査の結果の利用請求』を申請 | 日本移行出願に対して『早期審査』を申請 | ||
| （パターン１） | （パターン２） | ||
| 無し | 有り | 基礎からの内容追加 | 無し／有り |
| 原出願 | 国内優先出願 | 日本出願の区別 | 日本移行出願 |
| ２～３か月 | 日本の1st OA発行時期 （審査請求後） | １～３か月 *ISR発行(PCT出願後２～３か月)を待てば、 「先行技術の開示及び対比説明」を省略可能 | |
| ¥138,000 ＋ クレーム数×¥4,000 | 日本審査請求の庁費用 | ¥83,000 ＋ クレーム数×¥2,400 | |
| 無し | 国内優先出願庁費用¥14,000 国内優先出願手数料（事務所） | プラス費用 | 国内移行庁費用 ¥14,000 国内移行手数料（事務所） 早期審査申請手数料（事務所） |
| 国際調査手数料返還 ¥57,000 | マイナス費用 | 無し | |
（まとめ）
国際出願時までに、日本出願の早期権利化方針を考える出願人であれば、積極的に活用するメリットがあると言えるでしょう（内容追加無し→パターン１／内容追加有り→パターン２）。
パターン１を、『日本移行出願に対して早期審査を申請』する場合と比較すると、プラス費用が無い分安価ですが、日本での存続期間が１年短くなります。
パターン２を、『日本移行出願に対して早期審査を申請』する場合と比較すると、審査請求費用の違い、早期審査に関するプラス費用の有無、マイナス費用の関係から、費用面での差異はさほどありません。
（参考）
*2) 特許協力条約に基づく規則４２．１
*3) PCT国際調査及び予備審査ハンドブック第５章（手順ａ－４）